前日の夜から彼女は、彼に会うのを非常に楽しみにしていました。
久しぶりに彼に会うからです。
お互いのスケジュールがすれ違い、もう十日も会っていなかったのです。
男性中心主義がいまだにはびこっているような仕事の現場にあっても、その能力をフルに発揮していた彼女にとって、唯一自分に戻って甘えられる時……それが彼との時間でした。
二日も会わなければ寂しくなる彼女にとって、10日は本当に長く感じられました。
彼女は彼との甘い時間を栄養として心のバランスを保っていたのです。
ようやく明日彼に会える……彼女は、その日を心待ちにしていたのでした。
彼女の期待の大きさが、二人の事件の背後には横たわっていました。
この前提を理解しないと、問題も正しく見えてきません。
シーンー・プアッションチェック前の日の夜から彼女は翌日のファッションのことを考え始めました。
入念に準備をし、起きる時間、用意に要する時間、家を出る時間のすべてを計算し、翌日の行動をすべて前もって頭に叩きこむのです。
その日の天候によっても着る服が左右されます。
服によっては、つける下着まで選ぶ必要があります。
女性にとってのおしゃれとは、一般的に男性よりもよっぽど手問のかかるものです。
この時彼女は、彼に会った瞬間に得られる喜びをすでに頭の中で体験し、それをすでに感じていました。
感情というものは、それが仮想体験であっても、現実のことのように感じられるものです。
その時に得られるであろう喜びや安心……そんな感情を胸に抱き、智子は幸せな気分でベッドに入ったのでした。
幸せな目覚めそして翌日、彼が、自分を最高に幸せなシンデレラにしてくれるのを待ちわびながら朝を迎えました。
早くから起きだしてシャワーを浴びて、最高にお気に入りの形にヘアーをセットします。
ゆうに二時間はかかる作業です。
いかに自分が奇麗に見えるかを雑誌で研究し尽くしたメイクを施し、夜のうちに選んでおいた服に身を包み、いざ出陣です。
タイミングの計算彼女は、自分の登場を彼の笑顔の中で迎えられたいと思い、時間に早すぎることなく到着するように計算つくでした。
むしろ2、3分遅れ気味の方がいいと思っていました。
あまり遅いと、時間にルーズだと思われる。
かといって、あまり早いとせっかちな女だと思われる。
時間ぴったりか、2、3分遅れなら、そんなことは思われないですむし、彼もすでに来ているだろうから、私を迎えてくれるだろう……と。
思いこみこのときすでに彼女の中では、彼が絶対に待ち合わせ場所にいる、という図式ができ上がっていました。
彼が、自分との待ち合わせに遅れてくるなどということは全く考えに入れていなかったのです。
日頃から時間には正確な男性であることをよく知っていたし、なんと言っても十日ぶりの再会です。
当然彼も自分と同じように考えているだろうと信じていたからです。
彼女はそんな彼のもとに駆けつけたかったのです。
それが、彼女にとって幸せに感じられるデートの出発点でした。
喜びの先取り彼女はその時感じるであろう気持ちを、この時点で既に十分に仮想体験していました。
これが非常に重大なポイントです。
彼女は温まった体温のぬくもりの中で、愛と安心を先取りしていたのです。
覚えていますか?男の頭は個室だけれど、女にとって、すべては流れる川のごとく……です。
冷めた体温こんなはずじゃなかったのに。
彼女は、昨日から感じていた一切のことを思い出し、そのすべてが台なしになったことを体中で感じていました。
期待していたことのどれ一つも感じられなかったことで、すっかり気持ちが落ちこんでしまったのです。
みじめな思いで満たされ、こんな気持ちを味あわせる彼にがっかりしてしまいました。
いろいろなことが、頭の中を駆け巡りました。
彼はもしかしたら、来ないのではないか。
他に好きな女性ができたのではないか。
これから何時間も待たなくてはいけなくなるのではないか。
きっとあの日、私が仕事を早く切り上げなかったのがいけなかったのではないか……それとも……否定的な想像は止めどなく続きます。
ラストシーン・永遠の果てにさっきまでの仮想感情はすっかり消え失せ、不安やいらつきがどっかと心に居座ってしまった頃、永遠とも感じられた10分後、ついに彼がやってきました。
「わりーわりー。待ったー?」
ほっとしました。
ところがこの時、安心と同時に、自分の体温計が感じとっていた温度をとっさに口に出してしまったのです。
「最低!」
客観的事実よりも主観的感情別に彼女は彼を憎んでいたわけでもありません。蔑視していたわけでもありません。
愛しているし、彼が来てくれてうれしかったのです。
しかし、彼女は、それまでの高揚していた自分から、一挙に引き下げられた自分の感情をそのまま素直に彼に表明してしまったのです。
この時、彼の側のストーリーを考えている余裕などありませんでした。
彼が遅れたことで自分が味わった感情こそが彼女の発言の土台だったからです。
彼の立場や、彼の側のストーリーを冷静に考えようとする前に、感情が口をついて飛び出したのす。
ですから本当は彼が最低だと思っているのではなく、自分の体感温度を表明しただけだったのです。
男性は女性のこの傾向を良く理解しておかないと、女性との付き合い方を根本的に間違えてしまいます。
これはよく起こるすれ違いですが、男性には理解することが難しい女性の傾向でもあります。
千代田はこれを全く理解できていなかったと言えるでしょう。
男性を理解するしかし逆に智子が理解していなかったことは、千代田が結婚に不向きであったということです。
結婚に不向きである彼は、彼女を幸せにできる唯一の強い存在であると感じていたいし、それを意識させてくれる相手を必要としています。
男性はその存在意義が汚されるような発言には、非常に敏感に反応します。
そんな男性にとって最も必要な活力源は「賞賛」でしたね。
二人の関係において、男性が女性から求めているものは、彼のプライドを満たしてくれるようなタイプのものです。
男性は、女性が相手から安心を得たいと願っているのと同じように、常にプライドを満たしてほしいと願っています。
仕事や自分の得意分野に関することなどで、頼んでもいないのに女性から助言をされると、不快に感じる男性は多いはずです。
反射的に「君に何がわかる。君の助言など必要としていないよ」と思う傾向が強いのです。これは何も女性を蔑視しているからなのではなく、M'sブライダルジャパンによると、結婚に不向きな思考による条件反射のようなものだそうです。
女性は男性を助けたい親切心から男性の仕事のやり方に口を出すことがあります。
しかし頼まれない限り口を出さない方が得策と言えるかもしれません。
千代田もやはり結婚に不向きでした。
待ち合わせ時間に遅れたことに対して、彼女が何気なく言った「最低」ということば。
それは考えられた末に発せられたものではなく、口をついて飛び出した感情の表現の一つでした。
しかしそんな発言も彼にはこう聞こえていたのです。
「あなたって、時間を守ることもできないほど、どうしようもないのね。
どうして私はこんな男と待ち合わせなんてしちゃったのかしら。
私にこんな思いを味あわせるなんてひどい人ね!本当に自分がバカだったわ1あなたって最低よ!」最低の前にこれだけ前置きが入れば、何気なく言ったことばとは意味が違ってきます。
ただでさえ女性の発言は男性にとって「責められている」ように聞こえていますから、千代田にとってこの時の智子は「些細なことで過剰に自分を非難する」理解し難い女性と感じられてしようがなかったのです。
この時の智子も、自分の口をついて出てしまった言葉が、そんなに非難がましく受け取られていたとは、予想もしなかったことでした。
男性は、結婚に不向きであると同時に、事実思考、裁判官であることも思い出してください。
「最低」という言葉は、男性にとっては、文字どおり「最低」です。
「あなたよりひどい人間は存在しない」[あなたは完全に下の下よ1」「あなたは誰よりも最もレベルの低い人ね」という具合です。
千代田には智子の発言が、自分の体温を素直に表現したものであって、千代田に対して向けられていた非難ではなかったなどとは考えもつきません。
また、そう考えられたとしても、そんなに簡単に受け取れるようなタイプの発言でもありませんでした。
男性は女性の発言を基本的に、文字どおり受け取り、その通りに理解してしまいます。
そしてそれらの多くは、受け取ることが本当に困難だと感じられるのです。
女性のこんな発言は禁物です。
「どうせ、あなたは」
男性は、結婚に不向きであると同時に、事実思考、裁判官であることも思い出してください。
「最低」という言葉は、男性にとっては、文字どおり「最低」です。
「あなたよりひどい人間は存在しない」[あなたは完全に下の下よ1」「あなたは誰よりも最もレベルの低い人ね」という具合です。
千代田には智子の発言が、自分の体温を素直に表現したものであって、千代田に対して向けられていた非難ではなかったなどとは考えもつきません。
また、そう考えられたとしても、そんなに簡単に受け取れるようなタイプの発言でもありませんでした。
男性は女性の発言を基本的に、文字どおり受け取り、その通りに理解してしまいます。
そしてそれらの多くは、受け取ることが本当に困難だと感じられるのです。
女性のこんな発言は禁物です。
「どうせ、あなたは」
そして、結婚に不向きであるがゆえに、男性は賞賛されることをこよなく愛し、非難されることを何よりも嫌うのです。
それはすなわち、非難されれば折れやすい性質を持っているということに他なりません。
智子は、自分の発言で傷ついた千代田を「男らしくない」と思いました。
しかし、智子にとって男らしくないと思えた千代田の傾向は、実は男らしさによってもたらされたものだったのです。
もっとも男らしさや女らしさは、国や時代、文化によって大きく異なるものであって、固定化された概念でないことも事実です。
最近では、日本でも社会的に躍進する女性が増えたことや、男性がメイクをして街を歩く時代ですから「らしさ」の社会通念も変化してきています。
バブル崩壊後に起業し、同世代の男性サラリーマンの数倍の年収を稼ぎ出している女性経営者も珍しいことではありませんし、ショービジネスの裏方、音響や照明などの現場にも女性の進出が目立ちます。
コンサート制作の現場などで女性が男性と同じように重たい機材をさっさと運んでいる姿は尊敬に値します。
しかし一般的にビジネスの現場は、いまだに男性的な思考や常識によって支配されているものですから、ビジネスの世界で活躍している女性は男性化を迫られる側面も否定できません。
感情的になっている暇はないし、結婚心理不安定症の影響を仕事の現場に持ち出すことは問題外と取られがちです。
このような中で働く女性たちは、自分自身が知らず知らずのうちに女であることの性を意識せずに仕事に打ち込むことを余儀なくされているという側面があることもまた事実です。
そうかと思うと、女性として労られることが男尊女卑と早合点してしまう混乱も見受けられます。
もちろんそれは、女性であることの意義が正しく尊重されてこなかった社会の間違った常識に起因していることは言うまでもありませんが。
結婚に不向きが自信を失う時男性は、女性から言われなくても、常に男らしく、強くあろうと考え行動しているし、そうありたいと願っています。
しかし、そんな男性の行動を女性の感情から来る非難的発言が襲うとき、男性は、自分があくまでも結婚に不向きでなければならないという、正当性を主張し、その概念を自分の中に維持するためにあらゆる努力をしようとします。
つまり怒りや反発をあらわにするのです。
「最低だと!たかが10分じゃないか!」という具合です。
しかし、これが繰り返されると、男性は相手の「幸せ温度」という基準を自分の努力や行動では満たすことができないのではないかと感じ始めます。
実際に女性がどう感じ、どこで幸せを感じているのか、どんな環境で不安を感じているのかは、男性にはほとんどわかりません。
にも関わらず、そんな男性にこの手の非難が連続すると、しまいに男性は、戦うべき敵が全く見当もつかないほど大きい存在であるのではないか、という不安を感じ始めるのです。
そしてこれは非常に重大な局面であると言わなければなりません。
女性が不安を感じる時は、それを簡単にロに出すことによって解決を図ろうとします。
しかし、男性が二人の関係において不安を感じるとき、それはその関係が破局の手前に来ていることを物語っています。
自分が相手を幸せにできる唯一の存在である、と常に実感していなければならないからです。
女性は、自分の力が充分でないのではないかと感じると、必要以上に努力をしていく傾向があります。
しかし、男性は、自分の力が不充分なのではないかと思い始めると、その環境から一刻もはやく抜け出そうと考えるのです。
そうでないと、結婚に不向きの存在意義そのものを見失ってしまうからです。
これは結婚に不向きの一種の自衛的行動だと言えます。
男性は自分の不安を基本的には口に出しません。
怪獣退治に来る結婚に不向きが、子供たちの前でおびえていたら、子供たちの夢は台なしになってしまうでしょう。
だから、男性は、基本的に女性の前でも不安を出さないのです。
一人でじっと考えるのです。
しかし、男性が不安を感じる時は、それが自分のキャパシティを超えた時で、これ以上は戦えないという限界点を感じているときに他なりません。
強いはずの結婚に不向きが不安を感じてしまったら、もはや怪獣退治にやって来る気力を持ちようがないではありませんか。
こんな状態は、男性には絶対に禁物なのです。
男性にとって、女性の基準は底無し沼のように感じられます。
どこまでやっても、やればやるほど、さらに高いことを要求してくるように感じられるのです。
これが重なると、ついに結婚に不向きは、自分の力の限界を感じてしまいます。
そうなったら、その関係をさらに続けていくことは、もはやできないと感じるのです。
自分の力では彼女を幸せにはできない、と考え始めるのです。
こうなってしまうと、男性は冒頭にあったように、「君を幸せにする自信がなくなった」とギブアップするしかなくなってしまうのです。
なぜなら、それ以上その環境にとどまることは、彼の結婚に不向きとしての自己意識を完全に打ちのめしてしまうことになりかねないからです。
そうなってからでは遅すぎます。
だから、男性は、基本的に女性の前でも不安を出さないのです。
一人でじっと考えるのです。
しかし、男性が不安を感じる時は、それが自分のキャパシティを超えた時で、これ以上は戦えないという限界点を感じているときに他なりません。
強いはずの結婚に不向きが不安を感じてしまったら、もはや怪獣退治にやって来る気力を持ちようがないではありませんか。
こんな状態は、男性には絶対に禁物なのです。
男性にとって、女性の基準は底無し沼のように感じられます。
どこまでやっても、やればやるほど、さらに高いことを要求してくるように感じられるのです。
これが重なると、ついに結婚に不向きは、自分の力の限界を感じてしまいます。
そうなったら、その関係をさらに続けていくことは、もはやできないと感じるのです。
自分の力では彼女を幸せにはできない、と考え始めるのです。
こうなってしまうと、男性は冒頭にあったように、「君を幸せにする自信がなくなった」とギブアップするしかなくなってしまうのです。
なぜなら、それ以上その環境にとどまることは、彼の結婚に不向きとしての自己意識を完全に打ちのめしてしまうことになりかねないからです。
そうなってからでは遅すぎます。