結婚相談所のお見合いで知り合った恋人には、ありのままを見せるべきだと言います。
確かに、自分を取り繕って良いところばかり見せようとしても、いつかは正体がばれてしまうものです。
だったら、最初から自分をさらけ出したほうがいいに決まっています。
だからといって、自分をむき出しにしてばかりではいけません。
付き合いが長いカップルは、とくに注意が必要です。
彼と一緒にいることになじんでリラックスできるのは素晴らしいことではありますが、リラックスしすぎていると、とんだしっぺ返しをくらうことがあります。
リラックスするというのは、図々しくなることではないのです。
後悔先に立たずの状態に陥らないようにしなくては。
先日も、こんなことがありました。
長い間、仲良く付き合っていたカップルが突如、破局を迎えたのです。
別れた理由は、何と「彼女が太っているから」なんだそうです。
痩身サロンが喜びそうな台詞ですが、肉体的なことを理由に別れるなんてあんまりです。
私は自分がふられたように頭にきました。
もちろん、人間には好みのタイプというのがあります。
それくらいは、私にだってわかります。
彼にしたら、もっとスリムな人を結婚相手にしたかったのでしょう。
けれども、それなら、彼は最初から彼女と付き合うべきではなかったのです。
私の知る限り、彼女は痩せていたことなどないのですから。
二人が付き合い始めた時だって、彼女は決してスリムな女の子ではありませんでした。
彼女自身が述懐するように、「私、生まれてこの方、痩せていたことなどない」人なのですから。
彼は自分の意思でふっくらタイプの彼女を選んだはずです。
それなのに、五年も交際した挙げ句に、「太っている」を理由に別れるなんてあんまりじゃないか、そんなの単なる言い訳だと、私はムカムカしていたのです。
そのムカムカが絶頂に達していた頃に、彼と会った私は、よせばいいのについ「ひどいわよ」と、文句をつけてしまいました。
自分がふられたわけでもないのに、こういうのを余計なお世話というのでしょうが、どうにも我慢ができなかったのです。
けれども、彼は「それは誤解だ」と、言います。
「彼女が太っているから別れたわけではありません。
ただ、太っているのにパクパク好きなだけ食べるその態度が嫌になっただけですよ」と、逆襲してくるのです。
彼が言うには、ダイエットするならともかく、「太っていてもいいんだ、それでも好きなのが愛ってもんでしょ」といわんばかりの開き直りが許せなかったのだそうです。
私は負けずに応酬しました。
「でも、しょうがないでしょう。肉体的なことは自分ではコントロールできないんだもの。第一、五年も経ってからそんなこと言うなんて、おかしいじゃない」すると、彼は、「でもね、千代田さん。もし、好きな人が痩せて欲しいと言ったら、千代田さんだったら、少しは努力するでしょう?現実に体重が落ちなくてもいいんです。際限なく、ケーキを食べたりしないでしょう。僕はあいつのそういうところが嫌になったんです。これでも、僕のほうは努力してたんですよ。あいつが口臭のある男は嫌だっていうから、いつもマウスペットしたし、アルマー二着て欲しいっていうから、必死でバイトして、バーゲンに行ったりもしたしね。それなのに、あいつは何もしないんだもん。それでいながら、『このままの自分を好きでいて』なんて言われたってさあ。そうでしょう?そうじゃありませんか、ねえ?たまんないもん、俺ばっかりさ、頑張って。あいつはただ座って、食ってばかりじゃあさ」と、最後はほとんど愚痴めいた口調で訴えるのです。
どうやら、彼女の体重、それ自体はたいした問題ではなかったようです。
好きな人の好みに近づくような態度を見せたかどうかが、勝負の分かれ目だったわけです。
もちろん、素地のままの自分を好きになってもらえれば、それに越したことはありません。
けれども、子供ではないのですから、あまりにも飾らないでいると、他人をゲンナリさせてしまうことだってあるはずです。
そう、ちょうど処理していない腋の下のように、いけないっていうわけじゃないけど、ちょつとなあという感じを人に与えてしまうのだと思います。
長く付き合ったからといって、それに安住していては駄目です。
ありのままを見せることは、だらしなくなることと同義語ではありません。
結婚相談所で知り合ってからの関係が長くなればなるほど、自分に対して謙虚に接する態度が必要になってくるのでしょう。
心と体にだらけたゼイ肉がついてしまってはいないか、自分自身を今一度、点検してみてください。